実体験に基づく漁師の年収と経費

漁師が実際にどれくらい稼いでいるのか気になりませんか?

他のサイトでも漁師の年収の目安など載せられていますが、どれもこれもバラバラな年収になっています。

それもそのはず、漁師にも人によって漁が上手い下手があり、また、どれぐらいの天気の良さで出漁するかという判断も人それぞれ違っているのです。

なので、マグロ一本釣りで同じような漁法で生活している人たちを比べても、年収は全く異なってきます。

今回は僕という実例をもとに、1年間の月ごとの平均的な利益と経費を紹介します。

漁師の収入

水揚げ

釣った魚はほとんどセリ市場や直売店に卸します。

沖縄の魚がどれくらいの価格で取引されているのか知りたければ、沖縄海人魚市場というサイトで知ることが出来ます。

僕の2022年の1年間のマグロの水揚げです。

1月   425,000円
2月   196,000円
3月   200,000円
4月   817,000円
5月   352,000円
6月    8,000円
7月   447,000円
8月   108,000円
9月   826,000円
10月  618,000円
11月   37,000円
12月     0円
合計  4,034,000円

沖合の風速8メートル以下で出漁、予定があれば漁に出ない、死ぬ気で頑張るの熱意は無いけど怠けたりだらけたりはしないぐらいの頑張りレベル、での成果です。

釣れる時期や大漁不漁など毎年大幅なブレがありますが、300万~800万が目安になります。

作業船

湾内の水質調査や、無人島などの生態調査などで、船をチャーターすることがあり、海岸を開発したりする場合には盛んに行われます。

場所や調査内容にもよりますが、1日4万円ぐらいになります。

頻度的には一ヶ月に一回、年間約50万円の収入になります。

監視船

沖縄には違法な外国漁船がこっそりやってきて、資源をむさぼり取る輩がいます。

沖縄の西側で活動し、ほとんどの場合は中国漁船です。

それらを監視し、記録を取って防衛局に提出するという仕事が1年間に約25日ほどあります。

これが傭船料や日当として1日6万円ほどの収入になり、燃料代も防衛局持ちです。

波が立ちやすい海域で転覆や行方不明になる人がでるような事故が毎年発生します。

ロープ・網・ドラム缶・流木など漂流ゴミが太平洋ゴミベルトの一部から流れてくる海域でもあり、船のスクリューや船体にトラブルが発生することも多いです。

やりたがらない人もいるほど、トラブルさえなければ収入になる仕事です。

年間約150万円の収入になります。

水揚げ・作業船・監視船の合計で、1年間の売上は約500~1000万

これが僕の毎年の収入です。

これを見て1000万儲かるんだと勘違いしてはいけません。

漁業の経費はアホほど高額です。

燃料高騰と不漁が重なれば、仕事をすればするほど赤字になることもあるほどです。

漁師の支出

年間に必ず出る支出

組合費

漁協の組合員であれば年会費がかかります。

漁協によって違いがあるのか分かりませんが、僕のところでは毎月1万円、年間12万円になります。

漁協の組合員にならなければ、その漁協ごとに設定されている漁業権を使用できません。

僕は主に浮漁礁(パヤオ)でマグロ釣りをしているのですが、漁協とは別の団体の沖縄県浮漁礁漁業等調整連絡協議会という団体から使用権を得なければなりません。

パヤオの使用権の価格は船の大きさによりますが、僕は毎年2万4千円支払っています。

漁船保険

漁業者なら漁船保険は絶対必須の保険です。

僕は過去に漂流物との衝突で航行不能になり、3日間漂流したことがあります。

その時は福岡から船を購入し、沖縄に持って帰ってくる時でした。

大きな網にスクリューに絡まり、航行できなくなったのです。

しかもその後、天気予報がハズレて波の高さ4メートルのしけに遭遇。

購入したばかりで設備も道具もほとんど持っていない状況だったのでロープを外すことが出来ませんでした。

ギリギリ電波が届いたり届かなかったりの場所だったので、スマホの電波が届いた習慣に漂流している現在地の座標を沖縄の仲間に送信したりして事なきを得ました。

船をえい航してもらって帰ってきたので、その費用などを保険で賄えました。

沖縄は台風による損害やサンゴ礁との座礁などでトラブルがたくさんあります。

年間30万円ほど掛かりますが、漁船保険は必須です。

船舶電話

初航行で漂流した僕にとって、確実な連絡手段の確保は必須でした。

船舶電話とは、船の揺れなどに対応した船舶専用のアンテナを取り付けた衛星電話です。

これがあればどこでも連絡出来るので、安心して沖合に行けます。

使用料は基本料金が1万円ほど。通話料は1分200円くらいです。

衛星電話で長電話のおしゃべりをするわけでもないので通話料はそんなにかかっていません。

僕の場合、船舶電話は毎月1万2千円かかっています。

漁に行くとかかる支出

燃料費

漁業では最大の経費になるであろう燃料費です。

普通の漁船は主にディーゼルエンジンを載せているので、燃料は重油か軽油です。

重油の方が価格が安いのですが、軽油に比べて粘質性が高くエンジン内部の汚れ方が違い、軽油の方がエンジンも喜びます。

漁業者が漁船に給油する軽油は、申請して許可が下りれば軽油税金が免除され、通常より安い価格で購入することが出来ます。

その軽油免税の許可は、住民税などその他の税金をちゃんと支払っていないと許可が下りません。

僕の場合、1回の出漁で使う軽油は300リットルぐらいなので、現在の価格だと約3万円かかり、1年間では50万~100万程を目安にしています。

船の大きさやエンジンの性能、漁業の仕方などで目安はかなり変わりますが、個人でマグロ漁を営む程度の漁業であれば100万を目安にするといいです。

氷代

魚を釣った後に冷却保存する為の氷です。

断熱材入りの魚倉に氷を入れて、釣った魚を保冷します。

僕の場合は、予定した漁の日数にもよりますが、1回の漁に600キロの氷を入れるので、約6千円の費用が掛かります。

1年で15万円ほど掛かっています。

エサ代

1回の漁で使うエサは撒き餌用のキビナゴ10キロ約3千円、釣り針に付ける用のカタクチイワシ10キロ約3千5百円です。

1年間では約10万円ほどかかります。

沖縄の沖合では夜になるとトビイカというイカが簡単に釣れるので、それもマグロ用の餌として使っています。

漁船の整備や釣り道具にかかる支出

釣り道具

釣り針・ルアー・テグス・重り・釣り竿などなど、細かい道具も積もれば高額になります。

カジキ用の針などは1個700円とかするし、ルアーも地味に高いです。

設備の修理費(業者に依頼する大きな修理)

船のエンジン・発電機・ミッション・GPSやソナーなど、壊れたら自分では治せない設備の修理費です。

これが漁業する上で最大の出費になります。

僕の船のエンジンは新品で1200万円するし、定期的に分解して整備するオーバーホールをするだけでも200万~500万円ほど掛かります。

たまにしか起きない出費ですが、これが起こると数か月か数年はタダ働きになります。

だから漁師は借金持ちが多いのです。

道具や漁船の修理・改造・改良(自分でDIYする小さな修理)

漁船の船体の修理、電気系統の修理や改造、自作できる釣り道具などもお金がかかります。

業者に頼んだり、既製品を購入したりして、DIYすることなく漁業を営むこともできますが、それでは経費が掛かり過ぎてすぐに破産します。

DIY出来ない漁師を見たことないほど、みんな手先が器用です。

なんだかんだで年間50万円くらいは何らかの材料費に消えています。

これを書きながら気付いたけど、僕の周りでは不器用な人はみんな廃業してます。

漁師の適性があるかどうかは、DIY出来る、もしくは上達できるかどうかだけだと思います。

釣りの感性はやり続けていたら勝手に覚えてきます。

まとめ

個人事業主で一人でマグロ漁をする場合の収支は以下のようになると思います。(頑張らず、だけど怠けずの場合)

年間の売上は500~1000万円
年間の経費は300万円~600万円
年間の利益は-100万~700万円

といったところでしょうか。

頑張り次第で1000万は超えることも出来ますし、天気悪くても出漁するという命がけで頑張るなら、さらに稼げます。

しかし近年は明らかに漁獲量が低下傾向が続いていて、狙う魚種によっては廃業者もたくさん出ています。

漁業者にとっては厳しい時期ですし、いまだに改善する前兆もないので、今後も不漁状態が続くと思われます。

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